結婚の約束をしよう
オレはもしかしたら、既に生きてはいないんじゃないか…そんな思いが脳裏をよぎる。

だいたい死後の世界なんて誰も知らないんだーーーオレみたいにこうやって、ウロついているヤツがいてもおかしくはないだろ。


結愛の家の前まで来たところで、玄関のドアが開いて中から結愛が出て来た。

「結……。」

名前を呼ぼうとして、声が止まった。

オレは結愛の目の前にいるのに…結愛はキョロキョロと辺りを見渡している。

オレに、気づいていなかった。


結愛に付いて(憑いて?)行動していると、おかしな事が起きていた。

「てか陵って?」

「笹野陵って、誰?」

「…陵?誰だよそいつ。」

みんな、オレのことを知らないんだ。

忘れてしまったんだろうか、オレが転校してくる前に戻ったみたいだった。

更におかしなことに、結愛だけはオレのことを記憶していた。

「結愛!」

でもどれだけ叫んでも、オレの声が届く事はなかった。


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