結婚の約束をしよう
教室には、オレの席もなくなっていた。

「……。」

オレはどうなったんだという疑問が、再び甦る。


「長谷川さん!」

終業式の後、結愛は1人の女子の腕を引っ張りながら、教室とは反対の方向へ向かっていた。

あ…あの子。

昨日オレに告ってきた子…長谷川って言うのか。


「笹野って誰?もう行っていい?」

彼女もまた、オレの記憶がなかった。

「待って!だって私、長谷川さんが陵に告った時…実は隠れて聞いてたの!みんな、陵のこと知らないの!忘れちゃってるの!」

昨日のアレを結愛が聞いていたなんて、全然気が付かなかった。

そんな事より、何で結愛がそんなに必死なんだよーーー。

長谷川が帰った後も、結愛はその場を動かず冷たい床に座り込んでいた。

「結愛!」

届かないとわかっていても、呼んでしまうその名前ーーーオレはここにいると伝える事もできずに、窓をガタガタと揺らす事しかできなかった。


< 176 / 182 >

この作品をシェア

pagetop