結婚の約束をしよう
そのまま足早に立ち去る結愛の背中を、少しの間ポカンと見ていたオレ。

この予想外の展開は何なんだ…。

アイツの事が好きなんじゃなかったのかよ⁈

「わけわかんねーよ。」

オレは、ボヤきながら結愛の後を追った。



「…。」

次に結愛を見たオレは、言葉が見つからなかった……。

「うぇっ…陵ぉー…っ……うっ…うぅ。」

何故か結愛は、オレの名前を呼びながら泣いていて、そのままオレの家の前まで来ていた。

急ぐ……って、ここに来るためだったのか?


そして結愛は、インターホンに指を伸ばす。

「…。」

雨の音がなかったら、耐えられないほどの沈黙が続いた。

何度押しても、インターホンが鳴ることは…なかった。

それもそのはず、やっぱり9年ぶりに戻ってきたなんていう事実はなく、引っ越してからこの家に電気は通っていないのだから。

「すいませーん……!」

それでも結愛は諦めずに、玄関のドアをノックする。


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