結婚の約束をしよう
「くそ…ッ!」

こんなに近くにいるのに、自分の姿を見せることが出来ないなんてーーーオレは悔しくてたまらなかった。

「オレはここだ、結愛!」


悔しくて悔しくて…目に涙がたまる。

それが零れて、雨粒に混ざる。

せっかくの誕生日……オレのせいで、散々な1日になっちまったな。

諦めてフラフラと歩く結愛を支えてやることも出来ない……非力なオレが嫌になる。

「ごめん…。」

結愛の背中に向かってやっと一言だけ、届かない声を発した……。


家に帰ってきても結愛は暗いままで、おばさんとオレの話題でまた泣いていた。

「…。」

何で結愛がここまで必死になっているかは分からないけど、姿をあらわせないオレは、ただひたすらにもどかしい気持ちでしかなかった。

別れの言葉も愛の言葉も、何も言えない……使えねぇな、オレ。

結愛にあげた参考書の、オレのメモ書きはいつの間にか消えていて、オレが戻ってきたという事実も消えていくようだった。


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