結婚の約束をしよう
緊張で固まっている私に気づかない陵が、私の顔を覗き込む。

「結愛?」

ち、近い…近いから!

「な、何でもない!ありがとうっ!」

私は慌てて参考書を閉じて、陵が離れてくれるように祈った。

「そうか?ならいいけど。てか結愛、掃除機でもかけるか!」

その祈りはすぐに届き、陵は私から離れて部屋を見渡していた。


あぁ……もう少しで、触れるところだったよ。

心臓が、まるで全力疾走した後みたい…。

「ちょっと聞いてくるわ!」

「え⁈何を⁈」

ドキドキしすぎて、陵の話なんか耳に入ってきていなかった。

「掃除機借りに行くの!それとも結愛が持ってきてくれるか?」

「掃除機?な、なんで?」

陵にバレないように呼吸を整えながら、話を続けた。

「この部屋を掃除するに決まってるだろ。」

「わ、わかった。じゃぁ私持ってくるよ。」

「おう、待ってるわ。」

私は部屋を出ると、大きく息を吐いた。

それから、ゆっくりと深呼吸した。


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