結婚の約束をしよう
寒さに、動かす手足が控えめになる。

「…ハァ…ハァ……。」

走り始めて間もなく、体育の授業以外では全く運動をしない私の息は、すぐに切れるのだった。

運動部だった子たちとの差は開く一方で、深月も私より前にいるのが確認できた。

私も今年はもう少し頑張らなきゃ…。

毎年後ろから数えた方が早い着順位の私、”もっと体力つけろ。”とか言われて給食の量を増やされたらたまんない。


あ…。

「…ハァ……。」

マラソンコース序盤で既に疲れている私の中に、ふっと陵の声が舞い込んできた。

それは、昨日のカラオケで陵が唄っていた歌で、しっかりと大地を踏みしめているみたいに力強かった。

その声が、不思議と足を軽くする。

頑張れそうな、気持ちになる。

マラソンコース中盤、ペースアップした私は何人かを追い抜いた。

頬にあたる風の冷たさも、気にならなくなっているくらい、私は走ることに集中していた。

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