火恋 ~ひれん~
14章
ほぼ夜通し・・・という位、わたしを離さなかった渉さんは。少し寝不足気味な様子だったけれど、お昼過ぎに坂下さんが迎えに来た時には、いつも通りにダークめなスーツに身を包み、毅然とした表情で玄関先に立った。
「いってらっしゃい。・・・気を付けて」
「ああ、いい子で待ってろ。夜は少し遅くなる」
「はい」
「俺の居ない間に、藤に懐きすぎるなよ?」
少しだけ意地悪そうに眼を眇め、渉さんはわたしにキスを落とした。
牧野君の時と言い、全然見えないのに、ものすごくヤキモチ妬きなんですね実は。
「気を付けます」
クスリと返して。
渉さんが出掛けた途端に気も緩んだのか、陽気も手伝って、リビングのソファでつい転寝をしてしまった。ふと目が醒めたら、ジップアップのパーカーが広げて胸の辺りに掛けられていて。自分の部屋に戻れば良かったのに、藤君に余計な気を遣わせてしまったみたい。
壁時計を見やると、2時25分。1時間くらい眠った?
キッチンに藤君の姿は無く、パーカーをたたみ彼の部屋をノックした。応答なし。書き置きも無かったから外には出掛けていない筈。とすると、思い当たるのはルーフバルコニー。
「藤君」
リビングの掃き出し窓を開ける。
高さのある手すり壁に寄りかかり、煙草を咥えた藤君が、手にしたスマートフォンから顔を上げた。
「・・・なに?」
相変わらず面倒臭そうな表情をされるけれど、今は全く気にならない。外用のサンダルを履き、少し離れて彼の横に並ぶ。
「パーカー有りがとう」
あぁ、と気の無い返事が返る。
「昨日、わたしを眠らせたのも藤君でしょう?」
わざとついでのように訊いてみた。
「いってらっしゃい。・・・気を付けて」
「ああ、いい子で待ってろ。夜は少し遅くなる」
「はい」
「俺の居ない間に、藤に懐きすぎるなよ?」
少しだけ意地悪そうに眼を眇め、渉さんはわたしにキスを落とした。
牧野君の時と言い、全然見えないのに、ものすごくヤキモチ妬きなんですね実は。
「気を付けます」
クスリと返して。
渉さんが出掛けた途端に気も緩んだのか、陽気も手伝って、リビングのソファでつい転寝をしてしまった。ふと目が醒めたら、ジップアップのパーカーが広げて胸の辺りに掛けられていて。自分の部屋に戻れば良かったのに、藤君に余計な気を遣わせてしまったみたい。
壁時計を見やると、2時25分。1時間くらい眠った?
キッチンに藤君の姿は無く、パーカーをたたみ彼の部屋をノックした。応答なし。書き置きも無かったから外には出掛けていない筈。とすると、思い当たるのはルーフバルコニー。
「藤君」
リビングの掃き出し窓を開ける。
高さのある手すり壁に寄りかかり、煙草を咥えた藤君が、手にしたスマートフォンから顔を上げた。
「・・・なに?」
相変わらず面倒臭そうな表情をされるけれど、今は全く気にならない。外用のサンダルを履き、少し離れて彼の横に並ぶ。
「パーカー有りがとう」
あぁ、と気の無い返事が返る。
「昨日、わたしを眠らせたのも藤君でしょう?」
わざとついでのように訊いてみた。