短‐私たちの距離≒10cm
「徹……。ふぇ、」
「泣くなよ。……泣かないで。」
なんだか涙がとまらなくなってしまった。
徹、なんで、こんなことするの?
泣き止ませるため?
「ごめんな、彩音。」
謝らないで欲しかったよ。
欲しかった言葉は、そんな言葉じゃないから。
まだ、私の体は徹に包まれていた。嬉しい距離。
もっと近づきたいと思ってたのに、体の距離は0でも、心は全然近づいた気がしなくて。
徹の胸板を両腕で押した。案外、あっさりと開いてしまう距離。