僕と道化(ピエロ)と君の恋
 アパートの階段を一段づつ昇りながら、頭の中で言葉を返す。

 「何を?」

 『本当に気付かなかったの?』

 「だから何を!?」

 マコトとの会話に集中し、階段の途中で立ち止まる。

 昇りきるまで後八段。

 『鈍感!日之輪さんの服!』

 「服?そういえば珍しくおめかししてたな」

 手の中にある赤いパンプスを見ながら、ほんの数分前の記憶の中にいる日之輪さんを思い浮かべる。
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