僕と道化(ピエロ)と君の恋
 「マコトさん、知っていますか?」

 僕は何も答えなかった。ニチカさんは何も答えを欲しているわけではないと感じたから。

 「いつもと同じ、とゆうのは言い換えれば、そこを必ずその時間に通るって意味なんです」

 そして――と、ニチカさんは続ける。

 「私はいつもと同じ時間に、家の傍の道で車にさらわれたんです」

 ニチカさんの視線は僕の方に向いていたが、その目にはおそらく僕ではなく『その時』が写っているのだろう。
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