僕と道化(ピエロ)と君の恋
 「何度も……凌辱されました」

 「もういい!!」

 気付いた時には既に声は僕の口から出ていた。

 ニチカさんは手だけではなく、全身を小刻みに震わせて、俯いた。

 「もういいよ……わかったから……」

 僕はそれ以上何も言わなかった。かけるべき言葉などない、何を言っても言葉などに意味はないのだから。

 かつて早紀を失った僕の様に――

 「……蔑しますか?」

 ニチカさんは消えいるような声で呟いた。
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