僕と道化(ピエロ)と君の恋
 「あ、風船はお子様にしか渡せないんで……」

 僕は笑顔のまま、

 すみません。

 と言った。

 「あっ、いえ、そうじゃなくて……」

 彼女は両手を体の前でひらひらさせながら、早口で喋った。

 「私、今日面接に来たんですけど、事務所がわからなくて……」

 「ああ、事務所なら入園ゲートの真後ろですよ」

 「あっ、はい、ありがとうございます」

 そう言うと彼女は入園ゲートへ向かって歩いて行った。
< 4 / 229 >

この作品をシェア

pagetop