僕と道化(ピエロ)と君の恋
 「い、いや、そんな事はないですよ」

 華崎さん、日之輪さん……

 おかしいですよ?

 なんて言えるわけもなく、僕は華崎さんを避けつつ日之輪さんの姿を探した。

 日之輪さんがいたはずの場所には、日之輪さんが履いていたはずの靴が片方だけ置いてあり、そこから伸びているはずの日之輪さんの脚はなかった。

 「はぁ……日之輪さーん!」

 全ての施設を回る間に、僕は二十回以上日之輪さんの名前を呼んだ。
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