虹のかかる空【短編】
そうと決まれば急がなきゃ。消えちゃうからね。
工藤はそう言い、なぜかとても嬉しそうに、わたしの腕を引っ張る。
そっか。虹って、消えてしまうのか。
わたしは工藤に腕を引かれながらも、窓を振り返る。
窓ごしに見える虹の輝きは、さっきよりも少しだけ弱くなった気がする。
もしも、この瞬間が、彼の笑顔が。
あの虹のように儚く消えてしまう夢なのだとしたら。
それは嫌だな、と思う。
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