浅葱の空へ
ピピピッ ピピピッ
目覚ましの音で目が覚めた。
顔に手を触れれば何故か濡れていて、「またか…」と私はつぶやいた。
私、嘉崎 蓮華(カサキレンゲ)は幼い頃から妙な夢を見る。
決まって起きた時には泣いていて、頭の中には「何も出来なかった」という言葉と、とてつもない後悔の念が残っているという謎の現象。
いつも夢に出てくる男の人には覚えがなくて、何より時代背景が明らかにおかしい。
だって着物着てるんだよ?
それにあの羽織と腰に指した刀。
今から600年以上も前に活動したとされる新選組なんだと思う。
そしてあの男の人は新選組一番組組長の沖田総司。
敵からもその腕は高く評価され、労咳____今で言う肺結核のために若くして死んだ天才剣士。
でも、あの人が先祖ってことはまずない。
うちの家は代々神主の家系で、1500年以上も前からこの"比嘉咲神社"を守ってきた。
争いごととは無縁の家だし、沖田総司に結婚歴はないし……っていうことで毎回結論づけてはいるんだけれど、何十回どころか何千回と夢に見ているわけだから流石に気になる。
「蓮華お嬢さん!早くしないと遅刻しますよ」
部屋の外からかけられた声の主はお手伝いの宇津木さん。
わたしが生まれる前からうちに仕えているらしい。
ぱっと時計を見ると7:00過ぎている。
まずい。
あと20分で出ないと…
「ごめんありがとう。今行きます!!」
この夢を見た日の朝はどうもボーッとしてしまう。
最近見ることも減っていたから油断してたのもあると思うけど、、
慌ててパジャマ代わりの浴衣を脱ぎ捨て制服に着替えると、ドタバタと洗面所へ。
浴衣だと紐解くだけだから急ぎの時は大変便利。
顔を洗って歯磨きをして、腰まである栗色のまっすぐな髪の毛にブラシを通してパッカリセンター分けになっている前髪の根元を軽く濡らしてドライヤーをかければいつもの私がはい完成。
洗うのは面倒だけど前髪を除けば寝癖もつかないし意外と楽チン。
「お嬢さんホントにお急ぎにならないと…」
「あと10分あるから間に合うはずです!」
居間に行くと朝ごはんは既に出来上がっていて、隣にはお弁当までキチンと置いてある。
急いでご飯を掻き込み時計を見ればちょうど家を出る時間ぴったり。
「行ってきます!!」
カバンを方に引っ掛けて靴を履くと、私は学校に向かった。