浅葱の空へ


西暦2485年

元号は明星

改元してからもうすぐ17年になるらしい。

戦争は未だにあるけれどそれはごく一部の話であって、大半の国が先進国を中心に協定を結んで歩みを揃えたことで世界の一体化はより一層進んだ。

ちなみに日本もその先進国にガッツリ入っている。

おかげでこの300年、技術の発展がめざましく技術と名のつくもので日本に勝る国はない、とまで言われるくらいに成長している。

だけどそれと同時に、古くからの日本独自の文化が急激に衰退した。

そこで政府が作ったのが私の通う

"日本文化学園"

通称"日学"と呼ばれる幼稚園から大学まである国立の学校なの。

その名の通り日本の文化を学ぶ場であり、それらを後世に伝え残す人間を養成する場でもある。

普通の授業もあるけどその他に"文化"という教科が追加されていて、内容はそれぞれ選べるようになってるから普通の学校よりも楽しいんじゃないかな。

ちなみに私は伝統芸能音楽の一つである雅楽コース。
その中でも更に奏者なのか舞手なのかに分かれてくるという徹底ぶり。
まるで大学みたい。

高専と呼ばれる5年制の学校でも同じようなことをやっているところはあるけれど、どちらかといえば美術系や技術系といった伝統工芸なんかだから、私みたいに伝統音楽をやりたいっていう人間は必然的にここに来ることになっちゃうわけ。
あとは日本舞踊、茶道、華道に武道系の家元の子弟なんかも特に多いかな。

あとは政界の超大物や芸能人の子供とか、その親戚とか。

とりあえず、創立してから今年で250年ということで学校自体の歴史もある上に他大学への進学率もいい、そして何より文化についてを学べる、ということで国内トップクラスの名門校として世界からも注目を集めてる。

行事なんかにも力を入れているから文化祭ではTVカメラや雑誌の取材まで入る有様だ。

おかげで当日は大混乱。
生徒側の気合いも入ってるからめちゃくちゃ楽しいんだけどね。

さて、家を出てチャリを漕ぐこと10分。

電車に乗ることさらに20分。

改札を出て少し歩くと見えてくるのがまるでお城かというほど立派な門だ。

実はこれが日学の正門。
他に南門と北門があるけれどそっちは正門のグレードをほんのちょっと落としたくらいでやっぱり立派な物。

正門をくぐってそこから見えるのは意外と現代的な校舎だ。
とはいえ、生徒数が多い上に授業内容が細かく分かれていることから敷地内に建っている建物がとても多い。

文化を学ぶための校舎は文化特別棟と言われ、それぞれ授業内容に沿った外観や内装になっている。

「蓮華〜おはよっ!」

頭の高い位置で一つに結い上げた黒髪をピコピコと揺らしながら駆けてきたのは三滝江都(ミタキエツ)

日本舞踊の家元で、その舞は単独取材で雑誌に取り上げられるほど。

私とは家が近かったこともあって幼稚園から一緒の幼なじみ。
付き合いが長いのもあって一番仲がいいのが彼女。

「おはよ。いっつも遅刻ギリギリにくる江都がずいぶん早いね。なんかあった?」

私が聞くと、待ってましたと言わんばかりの勢いで江都は答えた。

「そーなの!!もー聞いて!?
またお祖母様がお見合い勧めてきたの!!しかも朝からって…ホントありえなくない!?」

でたっ…
この話が出ると話しは相当長くなることが予想されるっ

しかも頭抱えて固まってるし…

「と、とりあえず教室行こうか?
ここで固まってちゃ迷惑だし」

江都を引っ張って一先ず教室へと急いで歩いた。

< 3 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop