青藍のかけら
いきなり話題を振られ、不機嫌顔の深澤さんを気にしつつ、頭の中でスケジュール長を開く。
「ええと‥‥あ!」
「あ、何か予定あった?」
「はい‥すみません」
「そっかぁ残念」
「何かあるんですか」
がっくりと本当に残念そうに言うのでつい聞いてしまう。
「いやーみんなで飲み行こうと思って。新しい店がオープンしたらしくてさ。まぁ急なことだもんな。――デート、でしょ?」
最後のセリフでニヤリと笑う。
「違いますよ」
さらりと笑ってかわす。
いつもなら笑顔ができているか不安になるが、今日は大丈夫だろう。
今日は本当にデートなんてものじゃないし。
ブブブブブ‥と鞄の中の携帯が震える。
「榊ちゃんの?」
「はい」
瀬川さんに答えながら携帯を取り出すと、今日の待ち合わせ相手からだった。
一応一言断ってから電話に出る。
「はい」
『千鶴?俺だけど。待ち合わせ、覚えてる?』
「覚えてるよ」
聞き慣れた声が聞こえてほっとする。
『そう、じゃあ待ち合わせの時間も覚えていてくれると嬉しいな』
「え?五時半でしょう?」
まだ五時前を指す腕時計を見ながら答えると、不思議そうな私の声に苦笑する彼の声が聞こえた。
『四時半だよ』
「…え?」
そういえばそんな気もする。
『いつもの喫茶店にいるから』
苦笑しながら言って電話を切る。
……またやってしまった。