青藍のかけら
「待ち合わせの相手?」
携帯を持ったまま固まっている私に瀬川さんも苦笑している。
「はい」
「やっちゃったみたいだねぇ」
「はい…」
何度目かになる自分の失態にため息が出る。
今のところ被害者は彼だけだが、こうもやってしまうと落ち込む。
「すみません、失礼します」
ここから待ち合わせ場所にはそんなに遠くはないけど、急がなきゃ。
「うん、気をつけてねぇ」
瀬川さんはそう言って手を振ってくれた。黙ったままの彼にちらりと目を向けるとばっちり目が合ったけど、もうさっきのように笑ってくれることもなく、そっと視線を逸らされただけだった。
「千鶴、こっち」
待ち合わせの喫茶店に着いてキョロキョロしてた私に聞き慣れた声がかけられる。
「千尋、遅れてごめんね」
「いいよ、時間聞き間違えたんでしょ?」
ふわりと笑って店員にミルクティーを注文する。
千尋は普通ストレートしか飲まないから、もちろん私の分だ。
相変わらず気がきく子だ、と感心していると、妙に周りに見られていることに気づく。