青藍のかけら
「…相変わらず、モテモテだね」
「んー?見られてるのは千鶴がきれいだからだよ」
「……」
迷わずこんな歯の浮きそうなセリフがぽんぽん出てくるあたり、絶対自覚しているな、と思う。
まぁ、こんなに毎日注目されれば無理ないとは思うけれど。
こんなにきれいな顔してればそりゃ見られるだろうし。
「…ねぇ、千尋。どうしてこんなにモテるのに、彼女作らないの?」
ぱちり、と大きく目を開いて硬直する。
珍しいことを私が聞いたからだろう。
しかしそれも一瞬のことで、もう冷めてしまっているであろう紅茶を口に運ぶ。
「きれいで危なっかしい姉を持つとお世話が大変でさ」
ニヤリ、と目を細めて笑う。
「……そんなには危なっかしくないもん」
思い当たる節がありすぎてちょっと恥ずかしくなって拗ねたように言う。
同じ年ということもあって、いつも千尋には世話をかけっぱなしだ。
「冗談だよ、千鶴。俺がシスコンなだけ」
ぷ、と噴き出して言う千尋はやっぱりやさしい。
私と同じ遺伝子のはずなのに、私と千尋はあまり似ていない。
髪の色や目の色も微妙に違うし、顔立ちもあまり似ていないらしく、街を並んで歩くとまずカップルにしか見られない。