リアルな恋は落ち着かない
その後、休憩をはさみながら「岩屋」という洞窟まで行き、江ノ島をぐるりと一周した。

そろそろ帰ろうかと車に乗り込んだときには、時刻は17時を過ぎていた。

「疲れましたね。足、大丈夫ですか」

助手席に座った私に、眼鏡をかけた彼が問う。

数時間ぶりのその顔に、私はまたもドキッとした。

「かなり歩いたし。その靴だと結構疲れたんじゃないかなって」

「うん・・・。でもへいき」

自分の足元をくるんだ、紺色のパンプスを見つめる。

ヒールは低いし、履きなれた靴ではあるけれど、江ノ島ならばスニーカーの方がよかったかのかもしれない。


(確かに、足も痛いし、疲れたことは疲れたけれど・・・)


それ以上に楽しかった。

ドキドキとして、身体だけでなく気持ちも一緒に疲れたけれど、それでも今日は楽しくて、すごく幸せだって思った。

「靴、脱いでてくださいね。少しは楽だと思うから」

「うん」

言われて早速脱ぐ私。五十嵐くんが笑った。

「夕飯も一緒に食べられるなら、横浜戻ろうかと思うんですけど。時間、平気ですか」

「うん」

「じゃあ、小籠包の美味い店に行こうかな。好きですか」

「うん。大好き」


(・・・嬉しいな)


江ノ島は後にするけれど。

この後も、まだ一緒にいられることを、私はとても嬉しく思った。

陽が沈むのが、ずいぶん早くなったと感じる。

つい先日まで夏の名残があったのに、今はもう、すっかり季節は秋だと感じた。

海を望む帰り道。

夕暮れの空がきれいだった。

二人きりの車内、交わす言葉はあまり多くはなかったけれど、私はとても心地よかった。






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