リアルな恋は落ち着かない
「・・・」

「知りたいだけです。橘内さんの好きなこと」

言いながら、彼は真っ直ぐに前を向いていた。

表情がいまいちわからないけど、優しく語り掛けるその声に、私はドキリと胸を鳴らした。

「シュミレーションゲームですよね、恋愛の」

「うん」

「おもしろいですか」

「・・・うん。おもしろい」

「そっか」

五十嵐くんが笑った。

予想通りやっぱり笑った。

それから、どういうストーリーなのかを尋ねられた私は、もはやもう恥ずかしさを乗り越えて、ゲームタイトルとストーリー展開を五十嵐くんに話していった。

「大正時代か。幕末とかはよく聞きますけど」

「うん。でも、大正時代もなかなかいいよ」

「そうですか」

楽しそうに聞いてくれるので、正直ちょっと嬉しくなる。

好きなことを話すのは、基本、自分だってとても楽しいことなのだ。

「それで、橘内さんの好きな『コウノスケ』って、どんなやつなんですか。オレと似てないって、全力で言ってましたけど」


(う・・・。飲み会の時のこと、根に持ってる・・・)


あの時は確かにそう思ったし、全力否定をしたけれど。

意外と似ているのかもしれないと、今はココロ密かに思ってしまった。

「・・・幼馴染って設定なんだけど・・・すごく硬派なの。男らしいというか」

「へえ・・・。橘内さんは、硬派な男が好きなんですか」

「うん・・・好き」

答えると、五十嵐くんは少し不服そうな顔をした。
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