リアルな恋は落ち着かない
タシロワークスは、来年で創業45周年を迎える。

その記念事業に向けて、仕事は日々忙しさを増していた。

我がロボット開発部は、はなこちゃんをバージョンアップすべく、さまざまな機能追加を行うことになっている。

音声認識システムを担当する私は、新しく追加した会話のやりとりがスムーズに進むよう、テスト&修正の日々だ。

「はなこちゃん、なぞなぞだして」

『なぞなぞだね、いくよ!パンはパンでも食べられないパンはなーんだ』

「フライパン」

『正解!よくできました』


(うん、これはバッチリ!)


金曜日に修正を仕上げた箇所の、会話はとてもスムーズだ。

私はとてもほっとして、次の作業に移ろうとしたときだった。

「はーい!みんな、ちゅうもーく!」

席を外していた向坂部長が、そう言いながらフロアの中に入ってきた。

みんな、なんだなんだと言いながら、手を止めて入り口に立つ部長の方へ視線を向けた。

「急で悪いんだけどね、ちょっと、仕事が増えるぞー」

部長の言葉に、「えー!」とみんなが不服をもらした。

「これから本格的に忙しくなるんですよ。もう無理ですって」

「わかっているんだけど。社長経由で急に頼まれた仕事なんだ」
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