リアルな恋は落ち着かない
(しかも、彼氏とか彼女とか、そういう間柄ではないわけで・・・)


こんなことをしてもらっていいものか、私は全力で考えていた。

「・・・日曜日、ダメになってすみません」

目立たないよう身を小さくしていると、五十嵐くんが話を始めた。

左横を見上げると、まだ濡れた横顔があり、それが妙に色っぽくてちょっとドキッとしてしまう。

「オレも、あの直前に話を聞いて。断れる感じでもなくて・・・橘内さんに、先に言えればよかったんですけど」

辛そうな表情だった。

私は慌てて首を振る。

「ううん。急に決まったんだろうし・・・社長から話があったら、やっぱり断れないと思う」

でも・・・と思わず考える。

まりんちゃんの思惑が、絡んでいるのではないかって。

五十嵐くんに会いたい気持ちで、社長に頼んだんじゃないかって。

もちろんただの憶測だけど、今までのことを考えると、そう思わずにはいられなかった。


(社長も巻き込んでしまったら、普通の社員は断ることなんてできないもんね・・・)


「・・・すみません、ほんとに」

私の顔が曇っていたのか、彼は再度謝罪する。

その表情に、私ははっと笑顔を作った。

「ううん。五十嵐くんのせいではないし・・・土日ともだもんね、がんばって」

残念だけど、彼に非があることじゃない。

気持ちを立て直すように「へへっ」と笑うと、五十嵐くんは真面目な顔になって言う。

「・・・よかったら、来週でも再来週でも、うめ合わせさせてもらえませんか」

「え?」

「これで自然に流れて・・・っていうのは、オレが嫌だから。できれば、会いたいというか」
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