リアルな恋は落ち着かない
「じゃあ、また・・・。ありがとう、送ってくれて」
「はい。だから、もう中入ってください」
苦笑いする五十嵐くん。
私はいざとなると別れがたくて、なかなか足が動かない。
(でも、五十嵐くんも帰らなきゃだよね・・・)
雨で濡れてしまったし、五十嵐くんは明日も仕事だ。
風邪をひいたら大変だと、今度こそ帰ろうとした瞬間、私ははっと思い出す。
「そうだ。クリーニング代」
結局、ジャケットは彼が手にしたままでいる。
もうお店に行くのは頼むとしても、クリーニング代くらいは出そうと思った。
「いいですよ、ほんとに」
「ううん。それくらいは・・・」
言いながら、カバンの中の財布を探る。
トートバックの奥底に潜む、二つ折りの茶色い財布。
ポーチやハンカチが邪魔をして、なかなか取り出せないでいると。
「・・・橘内さん」
呼ばれた声に、応えるように顔を上げた。
するとその瞬間に、突然、視界を彼に遮られた。
「・・・!」
一瞬すぎて、起こったことを理解するのが難しかった。
触れた唇。
キスをされたとわかったのは、残った感触がそのまま消えなかったから。
「・・・これで十分です」
そう言うと、五十嵐くんは甘く笑った。
そして私をマンションの中に送り入れると、駅方面に歩いて行った。
「はい。だから、もう中入ってください」
苦笑いする五十嵐くん。
私はいざとなると別れがたくて、なかなか足が動かない。
(でも、五十嵐くんも帰らなきゃだよね・・・)
雨で濡れてしまったし、五十嵐くんは明日も仕事だ。
風邪をひいたら大変だと、今度こそ帰ろうとした瞬間、私ははっと思い出す。
「そうだ。クリーニング代」
結局、ジャケットは彼が手にしたままでいる。
もうお店に行くのは頼むとしても、クリーニング代くらいは出そうと思った。
「いいですよ、ほんとに」
「ううん。それくらいは・・・」
言いながら、カバンの中の財布を探る。
トートバックの奥底に潜む、二つ折りの茶色い財布。
ポーチやハンカチが邪魔をして、なかなか取り出せないでいると。
「・・・橘内さん」
呼ばれた声に、応えるように顔を上げた。
するとその瞬間に、突然、視界を彼に遮られた。
「・・・!」
一瞬すぎて、起こったことを理解するのが難しかった。
触れた唇。
キスをされたとわかったのは、残った感触がそのまま消えなかったから。
「・・・これで十分です」
そう言うと、五十嵐くんは甘く笑った。
そして私をマンションの中に送り入れると、駅方面に歩いて行った。