リアルな恋は落ち着かない
「そんなの~!まりんが来るって決まる前の話じゃないですか。事情変更ですよ、事情変更!!」

「でも、それを理由に行きたくないとは言いにくいよ・・・」

「えー!もーう!橘内さん、オトナな対応すぎるんだからっ!!」

美瑠久ちゃんが、キーッ!と怒った声をだす。


(私だって・・・)


行きたくない。ものすごく、行きたくなくなってしまった。

けれど、部長はわざわざ私の体調を確認してから、予約を取ってくれたのだ。

今更、行けないなんてさすがにちょっと言いにくい。

「なるべく端っこに座って、関わらないようにしてる・・・。多分、まりんちゃんは真ん中に座るだろうから」

「はあ〜・・・。そうですかあ。橘内さんが行くっていうなら、私も行こうかなあ・・・。

もつは食べたいんです!久しぶりだし、あそこはほんとにおいしいからなあ。もー!まりんさえ来なければ〜」

プリプリとする美瑠久ちゃん。

私は同意しながらも、確認のように言葉を足した。

「みんな行くんだよね?それなら大所帯だし、席が離れてれば、話すこともないだろうから・・・。

顔を合わせないように、端っこで食べてよう」

「そうですね~。井崎さんも行くって言ってたし、女子三人で固まって食べましょう!」

「うん」

美瑠久ちゃんに言いながら、私は自分自身にも必死に言い聞かせていた。


(離れていれば、大丈夫。顔を合わさなければ、大丈夫・・・)


男性陣の前ならば。五十嵐くんがいるならば、まりんちゃんはきっといい子のはずだから。

だから二人になったりしなければ、きっと何も起こらない。

私は何度も自分に言い聞かせ、何事もなく終わるようにと祈ることしかできなかった。











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