リアルな恋は落ち着かない
「微妙な距離だなー。やっぱ警戒されてるか」

阿部課長が「ははは」と笑う。

けれど4人掛けの長椅子では、この一人分あけた距離が、一番無難な位置だと思った。


(もっと近いと密着するし、これ以上離れたら、それこそ『警戒してます!』って感じになっちゃうし・・・)


と、自分の中で言い訳するけど、課長は、単に口にしただけで気分は害してないようだった。

「で?」と笑顔で話を続ける。

「その後どうなの?五十嵐とは」

「・・・っぶ・・・っ」

口に含んだカフェラテが、変なところに入ってしまった。

ゴホゴホと咳き込みながら、私は呼吸を整える。


(いきなりすぎるよ・・・)


「はは、ごめんごめん。そんなに動揺させるとは」

「ど、動揺というか、あまりにいきなりだったので・・・」

「いや、ずっと気になってたんだけど。橘内さんに聞ける機会がなかったからさ」


(・・・まあ、確かに・・・)


この1ヶ月、課長と関わる仕事は少なく、休憩時間も重ならなかった。

それに、柊吾にも気をつけるよう言われているので、私自身としても、二人きりにならないように確かに距離を置いていた。

「それで?どうなの、優しい?あいつ」

「・・・」

恥ずかしながらも、嘘をつく必要はないと思った。

素直に「はい」と頷くと、課長は「あー・・・」と変な声を出す。
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