リアルな恋は落ち着かない
「そんな真っ赤になって頷くか・・・。あー・・・やっぱ悔しいなー・・・」

微妙な顔で課長が笑う。

「でもまあ、あいつは黙っててもモテるタイプだろうから。鈴島まりんちゃんの件は落ち着いたって言ってもさ、何かあったら俺に言いなよ。

俺はいつでも、橘内さんの味方だからさ」

そう言うと、阿部課長は私の頭にポンと手を置く。

反射的に、私はドキッと胸を跳ね上げた。 

その時。

「あ・・・っと」

課長はバツが悪そうに、さっと手を引っ込めて、突然すくっと立ち上がる。

なんだろう、と課長の視線を追っていくと、そこには、殺気立った様相の、柊吾がこちらを睨んで立っていた。

「・・・タイミングが悪いんだよなあ」

課長がぼそっと呟いた。

柊吾が「は?」と睨みを効かせる。

「いや・・・。怒られそうだし、もう行くわ。じゃあね、橘内さん」
 
軽く笑って、空になったコーヒー缶をゴミ箱の中にポイッと捨てた。

柊吾は、そんな課長をそのまま黙って逃さない。

「怒るってわかってるなら、しないでください」

「あー・・・そうだなー、気をつけないとなー・・・。かわいいからさ、ついね」
 
そう言うと、柊吾の肩をポンとたたき、課長はその場を立ち去った。

柊吾はしばらく怖い顔をしていたけれど、気持ちを落ち着かせるように、「はあ」と大きな息をつく。
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