リアルな恋は落ち着かない
「とにかく。課長には気をつけろよ。心配で気が気じゃない」

「うん・・・」

しょんぼりしながら頷くと、柊吾は私の頭をポンポンポン、と軽くたたいた。

それは、「もういいよ」と言ってるような、優しい手の感触だった。

「・・・じゃあ、そろそろ。先に行くから」

「え?もう?」

「うん。一緒に戻ると、また部長たちがうるさいだろ」


(・・・そうだね・・・)


ここのところ、だいぶ落ち着いてはきたけれど。

二人で一緒にいようものなら、まだまだ冷やかされてしまうのだ。

みんながみんなそんな雰囲気ではあるけれど、部長と美瑠久ちゃんは、とくにそれが顕著だった。

「あ、じゃあ、私が先に戻るよ。柊吾は来たばかりだし」

「いいよ。優里菜が休憩に行ったから、ちょっと話せるかなって思っただけだし」

「課長がいたのは予想外だったけど」と苦笑いして、彼はそのまま席を立つ。

そして私のことを見下ろして、ふっと甘い顔になる。

「後でまたゆっくりしよう。なるべく早く終わらせるから、優里菜も頑張って」

「うん・・・」

腰を屈めて、私の頬を優しく撫でると、柊吾は「じゃあ」と言って立ち去った。

「・・・」


(仕事、頑張れそう・・・)


熱い頬を触りながら、私は一気にやる気がアップ。

そんな思いに浸っていると、壁の後ろから、「ウフフ」と笑う声がした。

「!?」

「たっちばっなさーん!」

「み、美瑠久ちゃん・・・!」
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