リアルな恋は落ち着かない
(そんなに人気のものなんだ・・・)


私は、机に置いたうさぎの缶をじっと眺める。


(すごくかわいいもんね。そっか、一般的なオトナ女子も、こういうものが好きなんだ)


そこらへんは、キャラ設定を固めすぎていたのかも、と、自分自身に反省をする。

そしてさらにもうひとつ、ふとしたことに気がついた。


(でも、美瑠久ちゃんのあの反応・・・。美瑠久ちゃんは、もらってないってことだよね?)


まさか・・・私だけ?

そういえば、他の人にも阿部課長から伊豆土産が配られた気配はなかった。


(これは・・・もしかして内緒のおみやげ・・・?)


誰と行ったのか、それはもちろんわかるけど。

課長が、私だけを特別に扱ってくれたような気がして、胸が高鳴るように嬉しかった。


(どうしよう、本当にそうだとしたら・・・)


何気なく、右前方にいる阿部課長の席を見てしまう。

すると、ふいに顔を上げた課長は、目が合った私に軽く微笑みかけてくれた。

「!」


(や、やっぱり、そうなのかな・・・)


気持ちを見透かされた思いで、焦るように、私はすぐに目線をそらした。

けれどどうにも落ち着かなくて、視線を宙にさまよわす。

すると今度は、左方向の席にいる五十嵐くんと、バッチリ目と目が合ってしまった。

「!!」


(う、うわ・・・!!)


なんか、タイミング悪いよ・・・。

五十嵐くんは、何かに気づいてしまっただろうか。

私は後ろめたいような恥ずかしさで、またもや視線をそらしてしまった。








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