リアルな恋は落ち着かない
適当に夕飯とお風呂を済ませた私は、自分の部屋に戻ってすぐに、課長からもらったおみやげたちを、机の上に置いてみた。

そしてかわいらしいうさぎ缶と、ピンクのハンカチを交互に見つめる。


(ちょっと、びっくりだったな・・・)


阿部課長は、どういう気持ちで私にこれをくれたのだろう。

そしてこれは、私だけにくれたのだろうか。


(美瑠久ちゃんに渡してなくて、井崎さんには渡しているとか。うーん・・・ないかなあ・・・)


課長は、土日で伊豆に行ったと言った。

週末の近場の温泉地。

奥さんと行ったであろうことは、きっと確実なのだけど。


(でも、わざわざ私にこれを買ってきてくれたんだ)


複雑だけど、やっぱりちょっと嬉しかった。

もちろん、美瑠久ちゃんや井崎さんにも、色違いや柄違いを後で渡したのかもしれない。


(それでも、うれしいな・・・)


ただ、おみやげをもらっただけなのに。

私は今日の出来事に、とても舞い上がっていた。


(・・・って、そうだ。五十嵐くんのことも気になるけど・・・)


コスプレが趣味だと多分誤解されたまま。

そしてそれを「阿部課長にも言いませんから」と言った彼の発言は、ずっと気になっていた。


(今日はあのタイミングで、五十嵐くんと目が合っちゃったしな・・・)


おみやげをくれたのは誰なのか、美瑠久ちゃんのことはごまかせたと思うけど、課長を見た後五十嵐くんと目が合うなんて、本当にタイミングが悪かった。


(ばれちゃったかな。課長からこれをもらったって。それで・・・嬉しがってるって)


「・・・」

やだな、どうしよう。

恥ずかしさに、後ろめたさが伴った。

既婚者の課長の行動にこんなにも舞い上がってしまうのは、やはりいけないのではないかと私の胸はチクリと痛んだ。
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