リアルな恋は落ち着かない
それに気づくと、途端にドキリと全身に緊張が走ってしまった。

いつだったか、オフィスラブの乙女ゲームをした時も、同じようなシチュエーションがあったことを思い出す。

ゲームでは、上司の仕事を手伝って帰りが遅くなったヒロインを、その上司が確か食事に誘うのだ。


(な、なんてね!乙女ゲームじゃないんだから)


自分にツッコミを入れ、帰り支度を整える。

すると私の席に歩み寄ってきた阿部課長は、私の頭に手を置いた。


(!)


「もう遅いし。お腹すいただろ。おごるから、なにか食べて帰ろうか」

「!?」


(リ、リアルだ・・・!)


頭ポンに続き、まさかの食事に誘われた!!

この後、ゲームの続きはいったいどうなるんだったっけ。

目を泳がせて戸惑う私。課長はふっと軽く笑った。

「警戒しないで。やらしい気持ちで誘っているわけじゃないよ」

「えっ!?あ、は、はい」

「本当に。助かったからお礼がしたいだけなんだ。このままだと、俺の気持ちが収まらないから」

「ね?」と顔を覗きこまれた。


(どうしよう・・・。頷くべきか、断るべきか・・・)


課長と二人で食事に行くなんて、嬉しいけれど緊張する。

そしてやはり、既婚者の男性と二人だけで食事に行くということに、抵抗がないわけではなかった。


(でも、ここで断ったら、それこそ『課長を警戒してます!』って、言っているような気もするし・・・)


悩む私に、課長はずいっと顔を近づけた。

「俺とじゃ嫌?」

「ち、違います・・・!」

「じゃあ、行こう」

そう言うと、課長は再び私の頭に手を置いた。

「!」

甘い顔で笑いかけられ、私の心臓は本気で一瞬止まってしまった。

そしてもう一度「行こうか」と声をかけられると、頷かずにはいられなかった。







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