リアルな恋は落ち着かない
「すみません・・・。じゃあ、お願いします」

「うん」と頷くと、課長は店員を呼んでいくつか料理を頼んでくれた。


(ちゃんと言った方が良かったのかな・・・)


食べたい料理さえ、言えない子だって課長に思われてしまっただろうか。

いい歳をしてるのに、こういう場面の振る舞いには全く慣れていなかった。

「お酒は?橘内さん飲めるっけ」

「いえ、あまり飲めないです」

「少しはいける?」

「はい・・・少しなら」

「じゃあ、一杯くらいはいいよね。サングリアならいいかな。おいしいから飲んでみて」

「・・・はい」

サングリアが私はよくわからなかったけれど、課長に任せることにした。

その後、しばらくすると阿部課長に白ワインが、私には赤に近い紫色をしたサングリアが運ばれてきた。

「お疲れ様」とグラスを合わせてから飲んだサングリアは、とても甘くておいしかった。

「おいしい・・・」

「でしょ。ここのは本当においしいから。良かったらもう一杯飲んで」
 
「はい」


(うん・・・これなら飲みやすい)


サングリアを飲みながら、おいしい食事を楽しんだ。

初めはとても緊張したけれど、課長は会話のリードがとても上手で、私はドキドキしながらも、それなりに話すことができた。


(阿部課長と二人で、こんなおしゃれなレストランで楽しく食事ができるなんて・・・)


私は、衣装を纏ったOLの自分を見失わないよう注意しながら、なんだか夢心地だった。
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