リアルな恋は落ち着かない
確かに私は、阿部課長に憧れている。

二人だけで飲みに行くのも、その分後ろめたい気持ちもあった。


(だけど、そんな関係ではまったくもってないわけで・・・)


やっぱり、五十嵐くんは伊豆みやげの件もなにか気づいていたのかも。

そして金曜日、追い打ちをかけるように二人でいるところを見たりしたから、私と課長の関係が、ただならぬものだと感じてしまったのかもしれない。


(でも大変だ!そんな誤解をこのまま受けてしまったら・・・)


阿部課長は既婚者だ。

このままでは私だってもちろん困るし、なにより課長に多大なる迷惑がかかってしまうことになる。


(誤解をきちんと解かないと・・・!)


弁解しようと急いで五十嵐くんの後を追おうとすると、今度は後ろからピンク色の明るい声に引き止められた。

「たっちばっなさーんっ!」

軽快な調子で、肩をポン!とたたかれた。

振り向くと、美瑠久ちゃんが満面の笑みで立っていた。

「おはようございますっ」

「あ・・おはよう」

「ウフフ。いい朝ですねっ」


(い、急いでるんだけど・・・)


挨拶だけして、すぐに行こうとしたけれど、美瑠久ちゃんはその後もなにか言いたげに、私のことをにやにや見つめる。

なんとなく、嫌な予感。

「・・・ウフフ、見ちゃいました」

「え?」

「五十嵐さんです。いま、こそこそとラブラブな感じで二人で話してましたよね。やっぱり、金曜日、お持ち帰りされちゃったんですね!」


(・・・・・・え?)


「ええっ!!??」


(お持ち帰り・・・!?)


「知ってるんですから。隠さなくても大丈夫ですよっ」

「い、いや・・・なにを・・・っていうか、あの、まったく話が見えないんだけど・・・」
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