リアルな恋は落ち着かない
(解かなくちゃ。五十嵐くんの誤解を・・・)


チラリと、左方向に位置する五十嵐くんの方を見た。

私から、3つ隣の彼の席。

間に二人分の席があるけど、その二人はちょうど今は離席していて、彼の姿がよく見えた。


(黙ってれば、かっこいいのにな・・・)


・・・なんて。

ヘンなことを言われたからって、ここは訂正しなくては。


(五十嵐くんは、しゃべっても普通にかっこいいか・・・)


パソコンに向き合い、黙々と仕事をこなす彼。

時折顎に手をかけて、悩むような仕草を見せる。

端正な横顔にかかる、やけに骨ばった大きな手。

その姿はやけに様になっていて、男っぽい色気を感じた。


(・・・って、しまった。思わずドキッとしてしまった・・・)


考えていたことそっちのけで、五十嵐くんを見ていた私。

すると彼の後方あたりから、なんとなくの視線を感じた。

ふっとそちらへ目を向ける。美瑠久ちゃんと目が合った。

『み、と、れ、ちゃ、い、ま、す、ね!』

と口パクで私に伝える美瑠久ちゃん。

「ウフフ」と、手を口元に当て、嬉しそうな意味深笑顔だ。


(・・・)


確かに、今は見てたけど・・・。

私は首を何度も振って、「違う」のジェスチャーをしたけれど、相変わらずにやにやしている美瑠久ちゃんには、伝わったかはわからない。


(これ以上、勘違いされたらとっても困るんですけども・・・)


美瑠久ちゃんの誤解を解くのは、たやすいものではなさそうだ。

私は、職場で五十嵐くんを見るのも話しかけるのも、今以上に最小限にしようと心に誓ったのだった。








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