苦手な言葉レンタルします!
「いらっしゃいませ」
その店の扉を入ると、愛想の良い店主らしき男が笑顔で山口佳代を迎えた。

佳代は、今しがた、この店から出てくる川崎の姿を見つけたが声をかけずに見送り。
そして、この「言葉」レンタルショップなる一風変わった店へ入ってみた。
「このお店は、「言葉」を貸してくれるんですか?」

初めて訪れる客が、一様に投げかける当然の質問を発した山口佳代に、店主はテンポの良い口調で一通りの説明をした。

「――まぁ、ざっとそんな具合ですがね、何かご入用の「言葉」ありますかね?」
「たとえば現在進行中の関係をもっと深めたい場合の「言葉」なんてあるんですか?」

山口は、今の川崎との関係をもっと発展させたいと願っているらしい。

「そうだね・・・そういう場合に最適なのは<距離を縮める言葉集>ってのがあるんですがね、あいにく今しがたレンタルしちゃたもんでね。今のところ予備もないし、しかも3ヶ月先まで返って来ないから」
「そうなんですか・・・残念」
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