苦手な言葉レンタルします!
「解りました。でしたら、<愛の結末編>の中の<別れ言葉集>が最適なんですがね、今ちょうど貸し出し中で、これが一月後じゃないと返ってこないんですよね・・・」
「いいよいいよ、一月ぐらい待つよ。今の彼女との付き合いが苦痛なわけじゃないしね。このお店があれば、そう焦ることも無さそうだからね!」

一月後、再び川崎は「言葉」レンタルショップを訪れた、もちろん返却されている筈の<愛の結末編>の中の<別れ言葉集>をレンタルするためだったのだが、なんと<愛の結末編>の中の<別れ言葉集>を借りた客が、再度3ヶ月の延長レンタルをしてしまったらしい。
「レンタルの予約って出来ないんですかね?」
川崎は、多少焦った様子で店主に尋ねた。

「うちのシステム上、お貸しした「言葉」が上手く働いてくれた上で返却してもらうのが原則なんだけどね、その<愛の結末編>の中の<別れ言葉集>を今回貸し出しているお客さんは、使う機会を伺ってるようで、未だ使っていないみたいなんですよね」
「だったら最悪、3ヶ月後に一度返ってきた時点で、先に俺に一度貸してもらう予約って出来ないわけ?そうしてもらえるなら、俺はなるべく早くそれを使って返しに来るよ!」
仕事中よりも、遥かにこういう時には機転が利くものだと、川崎は自分でも感心した。
その案を聞いた店主は、小さく肯きながら答えた。
「でしたら、そのお客さんが再度延長を申し出たら、その話を相談して見ますよ。そういうお約束でどうでしょうね?」
「そうしてよ、上手く話してよね、頼むからさぁ!」
川崎は、店主に再度念を押して店を出た。
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