苦手な言葉レンタルします!
川崎は滝口を伴って、そしてズボンのポケットに巾着を忍ばせて、昼休み5分前の山口佳代の勤める食品会社の扉を押した。
「先輩、今日こそは・・・」

滝口は、どうせ口説けるはずはないとふみながら嫌味な言葉を口にした。
この会社は、ちょうど今頃の時間は事務所には山口佳代と、同僚の長田直美しかいない。

「いらっしゃい、今日はどうしたんですか?プリンターのメインテナンスは月が変わってからですよね?」
そう云いながら山口佳代は、ニコニコしながら川崎の方をみた。
「今日は新製品のカタログを持って気なんですよね。先輩」
滝口が横から口を挟んだ。

川崎はズボンのポケットへ手を入れて、巾着を掴みながら胸で小さく呟いた。もちろんあの言葉を。

「山口さん、今週末とか予定あるの?良かったら金曜の夜でも呑みに行かない?」
妙に自信ありげに、川崎は山口佳代を包み込むような目線で呟いていた。
「川崎さんの驕りですか?だったら、ご馳走されちゃおうかなぁ~」
嬉しそうに山口は肯いた。

「もちろん驕りに決まってるさ、とっておきの美味しいお店押さえるよ。決まったら後で電話入れるから詳しい時間とかは、その時にね!」
川崎は自分でも、そのキリット女性をリードする自信の口調に驚く程だった。
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