Fw:添付画像あり
「川崎俊幸です。昔この町に住んでいたらしいんですが、あまり覚えていません。気軽に声かけて下さい。よろしくお願いします」
小さく頭を下げ顔を上げると、窓際の、風になびく長い黒髪が視界に入った。
その、夜の川の様な煌めく艶やかな黒髪の持ち主は、透き通る程色白で、夏の陽射しに溶け込んでしまう様な、彼女自身が白く発光している様な、そんな印象を受けた。
綺麗に通った鼻筋や頬も白かったが、小さな形の良い唇は、唯一血の通ったピンク色をしていて、瑞々しく艶めいていた。
だがその白とピンクの中に大きく輝く、黒真珠の様な漆黒の瞳は一際存在感があり、それは俺を見つめていた。
ドクンと、心臓が大きく動いた。
それは、彼女のあまりにも整った顔立ちからだけでは無く、その視線から何か、そう、言い知れぬ何かを感じたからだった。
教室に入って来た時、こんな女の子がいただろうか……。
彼女には圧倒的な存在感があった。
それなのに、彼女に気付いたのはたった今だった。
「川崎の席は葉月の後ろ……窓際の一番後ろの、空いている席な」
担任が指差した席は、黒髪の女の後ろだった。