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担任に向かって小さく頷き、机の間を縫う様にその席へ向かう。
途中、クラスメートになる奴らが「よろしく」と声を掛けてきた。
それに小さく笑顔を作りながら応えていき、葉月と呼ばれた黒髪の女の横をすり抜け、机に鞄を置こうとした時
「会いたかった……」
小さいけれど凜とした声に、そう言われた。
その声のする方、確かに前から……そう、葉月という女の方から聞こえたのだが、俺に顔を向けているのは他の奴らで、彼女は俺を見てはいなかった。
――空耳か?
椅子に座った所でちょうどチャイムが鳴り、朝のSHRの終わりと、一時間目の授業開始迄の休み時間が始まった事を告げた。
それは同時に、新しいクラスメートからの俺への質問タイムの始まりでもあった。
数々の質問を曖昧にかわし、一通り質問が終わると、俺は筆記用具を鞄から出し、一時間目の授業の準備を始めた。教科書はまだ買っていない。
その御蔭で、俺を質問攻めにしていたクラスメート達は、自分の席へ戻って行った。
一仕事終わったと溜め息をつくと、前の席からクスクスと笑う声が聞こえた。
「お疲れ」
そう言って黒髪の女は振り向いた。