Fw:添付画像あり

担任に向かって小さく頷き、机の間を縫う様にその席へ向かう。

途中、クラスメートになる奴らが「よろしく」と声を掛けてきた。

それに小さく笑顔を作りながら応えていき、葉月と呼ばれた黒髪の女の横をすり抜け、机に鞄を置こうとした時

「会いたかった……」

小さいけれど凜とした声に、そう言われた。

その声のする方、確かに前から……そう、葉月という女の方から聞こえたのだが、俺に顔を向けているのは他の奴らで、彼女は俺を見てはいなかった。

――空耳か?

椅子に座った所でちょうどチャイムが鳴り、朝のSHRの終わりと、一時間目の授業開始迄の休み時間が始まった事を告げた。

それは同時に、新しいクラスメートからの俺への質問タイムの始まりでもあった。


数々の質問を曖昧にかわし、一通り質問が終わると、俺は筆記用具を鞄から出し、一時間目の授業の準備を始めた。教科書はまだ買っていない。

その御蔭で、俺を質問攻めにしていたクラスメート達は、自分の席へ戻って行った。

一仕事終わったと溜め息をつくと、前の席からクスクスと笑う声が聞こえた。

「お疲れ」

そう言って黒髪の女は振り向いた。
< 11 / 66 >

この作品をシェア

pagetop