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「葉月も教科書無いと困るだろ。俺は大丈夫だよ、仕方ないし」
葉月の背中に声を掛けるが、葉月はまだごそごそと机を探っている。
「はい、今日の授業分の教科書。私はお隣りさんに見せてもらうから大丈夫。俊君は今日、お隣りさん居ないから」
そう言って七冊はある教科書を俺の机に乗せ、俺の隣の席に視線を移した。
確かにそこには誰も座ってなく、鞄も掛けられていなかった。
「千尋、今日もお休みみたいなの」
「今日もって、ずっと休んでんの?」
「うん、先週の金曜からだから、三日前から。
たまに一週間くらい無断欠席する事もあるんだよ、遊びに行って帰って来るのが嫌だったぁとか言ってさ」
葉月は口を尖らせ怒っている風に見せていたが、ひそめた眉は心配そうだった。
「千尋って言ってね、俊君のお隣りさんで、私の親友。すっごく可愛いの」
そう言って葉月は、優しく微笑んだ。
葉月の話を要約すると、俺のお隣さんは葉月の親友で、すっごく可愛い遊び人らしい。
でもきっと、俺の目の前で優しい微笑みを湛えている女の方が、何倍も綺麗なんだろうと心の中で思った。