Fw:添付画像あり

その潤んだ黒真珠の瞳はどこか儚げで、そんな表情を見てしまったら、これ以上断る事も出来なくなって。

「じゃあ……明日から頼むよ」

そう言うしか無くなっていた。

俺のその言葉に、葉月は花がほころんだ様に笑って、自分の弁当箱を机の脇に掛かった鞄にしまった。



それから予鈴が鳴るまで、四人で取り留めのない話をした。

どうやら藤本と小野田は中学の頃からの付き合いらしく、付き合って三年だとしっかり惚気てくれた。

もちろん惚気ていたのは藤本一人だけだったが。

そして俺と葉月の家が近い事が分かり、一緒に帰ろうと誘われた。

それに便乗する様に、藤本と小野田もこの町を案内すると提案してくれ、四人で帰る事を約束させられた。


「川崎、お前ん家の近くのさ、悠久山。あそこには入んなよ」

五時間目の授業開始のチャイムが鳴ると同時に小野田は腰を上げ、先程まで座っていた席の隣に座る俺を見下ろして言った。

「悠久山?なぜ」

特に入る用事も予定も無いが、入るなと言われるとその理由が知りたくなる。

俺の問いに、小野田は目をそらしら。

「……決まりだから」

そう呟き、自分の席へ戻っていった。
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