Fw:添付画像あり
「また一緒に帰ろうね」
「またな」
俺達も藤本に手を振り返すと、藤本は笑顔を向けてから、家へと入って行った。
その姿が見えなくなると、俺達は歩き出した。
何を話す訳でも無く、そんなに広くはない、たんぼに囲まれた道を二人で歩く。
オレンジ色の太陽も高い場所には無く、影が随分と伸びていた。
「ねぇ、俊君……」
「ん?」
俺はその影を見ながら応えた。
並んで歩く葉月の表情は分からない。
ただ、長い黒髪がさらさらとなびくのが、視界に入った。
「……何でもない」
そう言った葉月が、少し笑った様に見えた。
何と無く、この雰囲気が懐かしい。
昨日この風景だけを見た時、特に懐かしいとは思わなかったが、何故か今はそう感じる。
錯覚だろうか。
十年前の記憶を思い出した訳では無い。
それでも何と無く、今ここで、この風景に囲まれている事を懐かしく感じる。
傾いた太陽、田園風景、蝉の鳴き声、伸びた影、黒髪の美少女……
足元の影に目を落とすと、俺の影と並んであるはずの影が無かった。
立ち止まり顔を上げると、耳に心地良い声が、俺の名前を呼んだ。