Fw:添付画像あり
エアコンがきき始めた部屋で、暑さとは違う汗が滲んだ。
写真を手に動けないでいると、誰かが帰ってきたのか、玄関の戸を開ける音が聞こえた。
「ただいまー」
その声は美優だった。
トントンと階段を上ってくる音がして、俺の部屋の前で足音が止む。
「俊幸君、居る?」
俺はその声で我に返り、慌てて写真を封筒にしまって部屋の戸を開けた。
「ただいま」
白いセーラー服に紺色のスカーフ。
黒い通学鞄を持った美優が優しく微笑んで俺を見上げる。
その笑顔や声に、心が落ち着いた。
あの写真の事は気にしない。
真白という妹らしき存在の事も気にしない。
俺は昔から、無くした記憶の手掛かりを探る様な事はしなかった。
その記憶から避けてきた。
だからこれからもそれでいい。
じゃなければ何か、大切な物を無くしてしまいそうな気がしていたから……。
俺は自分にそう言い聞かせ、なるべく穏やかな笑顔を作った。
「おかえり、暑かっただろ」
美優の小さい頭に手を乗せ、涼しくなった俺の部屋に肩を抱いて促すと、くすぐったそうに笑い、部屋に入った。