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「どうした?」
あまりの驚き様にそう聞くと「いや、何でもない」と言って、小野田は藤本が開いた弁当に箸をつけた。
小野田の反応は気になったが、本人が何でもないと言うならこれ以上聞いても仕方がないだろう。
俺も葉月が作ってくれた弁当の蓋を開けると、音楽の様な声が、小さく呟いた。
「川崎……美優」
確かに葉月がそう呟いた様に聞こえたのだが、俺が顔を上げると、葉月はミニトマトを口に入れていた。
その顔と目が合うと、葉月は左手を口許に持っていき、照れた様に笑った。
俺の聞き間違えか……。
開けた弁当の中身は何とも豪華で、色彩豊かだった。
ウィンナーがタコや蟹になり、人参は花の形をして、うずらの卵はヒヨコに化けている。
ご飯の上にはそぼろと桜でんぶが乗っかっていた。
おかずも、サラダや春巻やピーマンの肉詰め。
他にも手の込んだ料理が敷き詰められていた。
忙しい朝に、こんなに時間を掛けてくれたのか。
「ありがとな」
俺はもう一度、心から感謝の気持ちを込めてお礼を言った。
「どういたしまして」
葉月はそう言って、少し首を傾げて笑った。