Fw:添付画像あり
随分昔に舗装されたのか所々に割れ目の入った細い道を、家に向かって歩く。
道の両脇には水の張られたたんぼが広がり、稲が青々と伸びていた。
たんぼに囲まれる様にぽつぽつと建つ民家達は、いかにも日本家屋といった感じで、色褪せたトタン屋根やひび割れた外壁から、もう何十年も前に建てられたという事が窺い知れた。
俺はこの町に住んでたんだよな……。
抜け落ちた記憶の断片を探ってみても、この町に纏わる事は何も思い出せなかった。
記憶を探るのをやめた時、右手の指先を、柔らかい感触が包んだ。
その手の方を見下ろすと、俺の肩辺りの高さに並んで歩く背の低い美優のつむじが見えた。
美優の左手を辿って行くと、俺の指先をちょこんと握っている。
その握り方が可愛くて、そのまま美優の指の間に指を滑り込ませ、ぎゅっと握った。
美優の小さな手の柔らかさが伝わった時、美優も俺の手を握り返してきた。
今、絶対えくぼ作りながら笑ってるな。
相変わらずつむじしか見えないが、義妹となる美優の事は誰よりも知っていた。
美優は、俺の母親の再婚相手の娘。
俺の義父となる人は、俺の父親の親友だったそうだ。