Fw:添付画像あり

「良いのよ。気使わないで」

葉月は笑いかけ、楽しそうに左手を左右に振った。

その振った手が俺の頬に冷たい風を送り、心地良かった。

「俺の貰って」

俺は自分の前に置かれた、少し汗のかいたグラスを葉月の前に置いた。

「でも……」

「自分の分くらい自分で持ってくるよ」

葉月が何か言おうとしたが、俺はその前に腰を上げ、三人を部屋に残して美優と部屋を出た。

涼しかった場所から湿気のある蒸し暑さに襲われ、息が上手く出来なかった。

「俊幸君、ごめんね」

自分の失敗を悔やむ様に俯く美優の頭に、右手を優しく乗せた。

「ありがとな」

そう言って階段を降り台所へ向かうと、美優も後をついてきた。

冷蔵庫から作り置きされた麦茶を出し、氷を入れたグラスに注いでいく。

氷が小さな音を立てて割れていった。

麦茶をグラスに並々と注ぎ、その手を止めて冷蔵庫にまたしまうと、後ろから抱きしめられ、腰辺りに細い両腕が絡められた。

「……美優?」

昼間あれほど煩かった蝉の鳴き声は、もうあまり聞こえなかった。

もう夕方らしい。

だけどやはりこの台所も、美優に抱きしめられている背中も暑かった。
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