Fw:添付画像あり
その姿がゆっくりと一歩ずつ近付いてくる。
その度、ゴキッバキッと、何かが折れる様な音がし、影の四肢がだらりと有り得ない方に曲がる。
昼間感じた、あの錆びた鉄の様な臭いが鼻をついた。
背中が嫌な汗でぬめる。
美優を抱いた腕に鳥肌が立った。
口の中はカラカラに渇き、唾を飲み下す音がゴクンと響いた。
影は俺を見下ろす様に俯き、口許だけが月の光に照らされ、ニタリと笑っていた。
美優を守ろうと抱く腕に力をこめようとしたが、やはり力が入らない。
錆びた鉄の臭いがこの部屋に充満している様で、もうその臭いしか感じられなかった。
影が手をのばす。
ポタ、ポタ……と、何かがその腕から落ち、美優のパジャマや顔を黒く染めていった。
――血だ。
その腕が、美優の細い首に掛かる。
俺は息を飲み、顔の見えない影を睨んだ。
ギリギリと音をさせ、首を絞める力が強くなり、美優が苦しそうな表情をした。
だが美優は目を開けない。
「……っ!……っっ!」
俺は必死に美優を起こそうと、その影に抵抗しようと声を絞り出したが、声帯が震える事は無く空気だけが漏れた。