Fw:添付画像あり
新しい我が家……と言っても美優の家に越して来ただけなのだが、その家に入るのは今日が初めてだった。
いや、失われた記憶の中では入った事があったのかもしれないが、今の俺にとっては初めてだ。
幼い頃から交流があったとは言え、両親が離婚してこの町を出てからはここに来る事は無く、いつも美優達親子が俺達の街へ来ていた。
「俊幸、お前の部屋がやっと出来たぞ」
繋いでいた手を解き玄関に入ると、義父となる人は額に汗を滲ませながら爽やかに笑った。
朝早くこの家に着いた時は、俺の部屋になるはずの部屋はまだ物置だった。
越して来る前に多少整理はしてくれていたらしいが、俺が見る限りどう見ても物置だった。
お洒落な感じに言い換えるなら、ウォークインクローゼットだ。
そこには美優の小さかった頃の服や靴、バッグや帽子など、今の美優にはもう明らかに必要の無い物達が展示されていたからだ。
その展示物を何処に隠したのかは分からないが、二階に上がりその部屋を覗くと、俺が前の家で使っていた物が綺麗に配置され、それだけではなく、新しい家具も増えていた。
そこはまさしく、俺の新しい部屋だった。