【改訂版】異世界でわたしは恋をする
4 ウィルの想い
『ルードがこの城に戻ってくるまでは、ウィル、お前が次期国王として私と共にこの国を守るんだ。いいな?』
それは二年前のこと。
現国王である父にそう命じられた私は、それから皇太子として公務にあたってきた。
兄がこの国に戻ってくるまでの、一時的なもの。
けれど私には皇太子という荷が重すぎて、皇太子としての毎日はそれはもう息苦しい生活だった。
そんな時、私の前に現れたひとりの女。
護衛から庭に倒れていると報告を受け、護衛と共にその場に向かい、メルンの花の上で寝ているユーリを見た時は、天使がどこかしらから迷い込んできたのかと思ったくらいだ。
メルンの花に囲まれ横たわるユーリは、それはとても美しかった。
陽の光で柔らかそうな黒い髪がキラキラと輝き、風にふわりと揺れる。
黒い髪に生える、白い肌。
どこか幼さを残す寝顔。
私の身体にすっぽりと収まってしまうような、小さな身体。
全てが美しく、そして愛おしく思えた。