【改訂版】異世界でわたしは恋をする
この魔術を使ったということは、どこかで良からぬ事が起こりつつある、ということ。

その危険な芽は小さな内に摘み取ってしまわなければならない。


ヴィードは世界の中で一番大きな国だ。

まちがいなくこの国を狙って、どこかの国がこの恐ろしい魔術を使ったのだろう。

しかしその魔術は失敗し、この城の庭にユーリが倒れていた。


幸いユーリは全く魔力を持ち合わせていない。

魔力を持ち合わせていない、ということは、この国に危害を与えることは出来ないということ。


むしろ彼女は可哀想な人間で、何気ない普通の生活を送っていたさなかに、いきなりこの世界へ連れて来られてしまった。

彼女のショックは計り知れないだろう。

だからユーリが元の世界に戻れる日が来るまで、それまでは私の下で何不自由ない生活をしてもらおうと思った。


それから公務が終わった後に、ユーリの部屋へと通う毎日が始まる。

この国にとってユーリが危険人物でないのは分かっているが、これはあくまで私1人の見解。

魔術士長の正式な判断が下されるまでは、ユーリを部屋から出さないようにすることになった。


部屋の中で一日過ごすのは退屈で仕方ないだろう。

そう思い、私は時間のある限りユーリのもとへ通った。


・・・まあ理由はそれだけではないけれど。

私自身がユーリのいた世界の話を聞くのが楽しみで仕方なかったし、なによりもユーリ自身に惹かれていた、というのもある。


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